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2010年4月10日 (土)

【展覧会レポート】東北画は可能か?後編 @三瀬氏との対話

前編の展覧会レポートに続き、後編では、この展覧会の「首謀者」である、三瀬夏之介氏との対話を軸に、美術教育のあり方について考えてみたいと思います。

その前に、三瀬氏の人物像について、私が書くよりもずっと伝わる文章がありますので、ご参照いただくとして。。。

【三瀬夏之介展 「冬の夏」 佐藤美術館】開催時の紹介文

以前のレポートにも書きましたが、上の紹介文の、イタリアで知り合った詩人に「この世には人間しか居ない」と、「日本画」を概念ごと否定されてしまった彼が、その言葉に胸をえぐられるように共感しつつも、それでも、「日本画」について理解して欲しかったと葛藤する様がとてもリアルで、なんて素直で正直なひとなのだろうと。

そんな彼のことを知るにつれ、ときに「破壊」とも称される彼の仕事は、確実に「次なるものの構築を前提とした破壊」、あるいは、「日本画への愛情を持った、大真面目な破壊」なのではないか?と、今回の展示にも興味が沸いたのです。

そして、「イタリアでの葛藤に決着をつけられぬまま、若い学生を教える立場になってしまった自分に一体何が出来るのだろうか?(東北画~展の案内より、意訳)」と、思った彼は、だったらそれをそのまま彼らにぶつけてみてはどうだろうか?と。

それが今回の企画意図だと私は推察しますが、、、そんな「葛藤」を、展覧会と言う形に具現化してしまう彼の行動力と、また、そんな彼を丸ごと受け止めてしまう東北芸大の器の大きさには、新鮮な驚きと共に、大きな可能性を感じずには居られない訳です。

・・・と、前置きが長くなってしまったのですが。。。

たくさんのお話の中で、とても印象的だったのは、彼の学生時代のお話で。

伝統を重んじる奈良に生まれた彼は、そんな文化に反発する気持ちも大きかったそうなのですが、大学時代に学んだある先生は、半ば強制的に伝統的な花鳥画の勉強を強いたのだそうで。

無論、彼はその教えには反発心を持ったのですが、今思うと、その経験を経て、自分が本当に求めているものは何なのか?という事に気づかせてもらう事が出来た(あるいは、考えるきっかけを作ってもらえた)と思うと。

また、一方で、当時の美術大学には、個人尊重の放任主義が根づいており、何も教えない大学と教えすぎる教官に挟まれ、自由と伝統の間でもがいてきたのだと。(注:花鳥画尊重の先生はその中では少数派と言えるのだと思います)

ほぼ同世代の私の学生生活も、、、放任主義と言いつつも、伝統と言う足かせをはめられたような息苦しさの中、現代と古典、具象と抽象、東洋と西洋、その他諸々の相反する要素の中から常に選択を迫られるような強迫観念の中で、「自分とは何なのだろうか?」と、問い続ける日々でしたので、彼の言葉には親近感があるのです。

そこで今、彼が大学で行おうとしていることは、大人しい学生さん達に、「もっと、無茶なことをやってみろ!」と、けしかけることで。
それは、花鳥画を勧めた先生とおなじ事をしているのだと彼は言います。

ただし、そこには彼なりの思いと愛情があり、、、むしろ、強烈に自分の価値観を押し付けることで、「私は、そんなの嫌い!」と反発するも良し、「俺は大好きだぜ!」と勢いづくのも良し、、、彼らの中に積極的な意思が芽生えてくれればそれで良いのだと。

それを聞いて、私は、第一印象では少し疑問があった、今回の「三瀬色満載の展示」も、「アリ」なのではないか?と思いまして。

実際、今回の展覧会は、当初50人程度のメンバーでスタートし、最終的に残ったのは30人弱とのことで、中には展覧会に賛同しかねると去っていった生徒さんも居たのだそうで。

「敢えてこの活動に背を向ける勇気にも価値はあるのだ」と、、、これは私の思ったことですが、三瀬さんもきっと同じ思いなのではないでしょうか?

しかしながら、そんな三瀬さんも、ご自身の活動に疑問を持たれる事もあるそうで。
それは、昨今の美術大学の変化にも関わる事なのですが。

先述のとおり、権威あると言われる学校の多くは現在も私達の頃と同じ放任主義を貫いているのだそうですが、一部の新興勢力といわれる大学では、人材育成という観点で積極的な教育が行われ始めているのだと。

東北芸大も後者の「教える学校」へと変化を遂げる中、三瀬さんもその一翼を担うため採用されたようなところもあるのだと思いますが、、、。

私自身は、そのような新しい動きに大きな期待を寄せる反面、放任主義に作家生活の厳しさを教えられた実感もあり、、、今の時点では、そのどちらが美術大学のあり方として正しいのか?はわかりません。

そこはぜひ、現場に身を置かれる三瀬さんに実感を尋ねて見たいところだったのですが、そこにはやはり同じように感じることもあるそうで。。。

要は、、、「芸は盗むもの」と言わんばかりに何も教えない環境から、自らの力で這い上がるくらいの知恵と根性がなかったら、この世界を生きていくことなど出来ない訳で。
少なくも、三瀬さんご自身にその自負があるにも拘らず、こうして学生さんたちを先導することが本当に正しいのか?と。

でも、「だからと言って、尻込みしていたら何も出来ないのだ」と言う彼の言葉は非常に力強く思え、やっぱり、お話できてよかったと。

・・・

他にもたくさんの話をしましたが、書ききれませんのでこの辺にしておきますが。
着任2年目となる今年度も、彼は引き続きこの活動を続け、いち地方美術大学の枠を超えて広く地域とも関わり、さらにその動きを世界中に広げるくらいの心意気で頑張るのだと。

そして、そんな力強い目の奥で、「これって本当に正しいの?」と自問自答する三瀬氏の誠実さは、きっとこの活動を正しい方向に導くのではないか?と。

なんだか、生意気なこともたくさん書いてしまったように思いますが、、、
期待を込めて、今後の活動を見守らせていただきたいと思う私なのでありました。

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コメント

はじめまして。いつもブログ村から教室のお話など興味深く拝見しておりました。
東北画、わたしも見てまいりました☆わたしは三瀬さんの作品をみると何をしてもいいんだ!と元気が出ます。
是非対談にお邪魔してお話おうかがいしてみたかったです。
時々立ち寄らせていただくかと思いますが、よろしくお願いします。

投稿: hiro | 2010年4月21日 (水) 21:32

hiroさま

はじめまして。
たびたびのご訪問、そして、コメント、ありがとうございます。

お名前のリンクより、そちらのブログも拝見させて頂きましたが、以前、私もブログ村から訪問させていただいた事があるページでしたようで、同業者の方ですね♪

今後とも、情報交換よろしくお願いいたします。

三瀬さんは、思ったとおり、気さくで話のわかる、そして熱い行動力を持った方でした。

今の時代、美術業界全体が、胡坐をかいて黙っていては立ち行かない状況に陥りつつあるのではないか?と思っておりまして、少なくも、同業者でにらみ合ったり足を引っ張りあったりしている状況ではないことは確かだと。

そんな意味でも、このブログでは、損得勘定抜きに、自分の心に響いたものや人を少しでも多くの方に知っていただくべく活動して行こうと思っております。

それでは、改めまして、どうぞよろしくお願いいたします。

投稿: ムラタヒロキ | 2010年4月21日 (水) 22:17

ご返信ありがとうございます。
わたしもブログをはじめて、同業の知人友人、先輩ができ、非常に勉強にもなり、教室の教材を教えていただいたり、団体に推薦しあったりもしました。毎日毎日画論や自分の表現への模索に悩んで苦しんでしておりますが、他の方の感じ方も大変参考になります。
こちらでの美術界への考察も興味深く読んでいます。
ブログをされている方は積極的で前向きでいいですね、足を引っ張りあうとか、ケチをつけるとか、よくあることですが悲しいことです。広く深く日本画や芸術について話せる機会が生まれれば、と思っております。よろしくお願いします。

投稿: hiro | 2010年4月23日 (金) 18:05

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