【展覧会レポート】 田淵俊夫展
「日本橋三越本店」と「高島屋日本橋店」の両百貨店にまたがって開催された「田淵俊夫展」のレポートです。
日記の日付は執筆日ですが、先に閉会された三越展の最終日に駆け込み、ギリギリで両展を梯子することが出来ました。
二つの展覧会は、大学の退官にあわせフランスで開催した「画業40周年記念展」の巡回という位置づけで、これまでの画業を紹介する三越展と、、、5年の歳月をかけ完成させたばかりの、京都「智積院」講堂襖絵が一同に展示された高島屋展という構成になっていました。
先ず最初の三越展は、「線描きに目覚めた」初期作品、「線描きに色彩を加えていった」中期作品、そして「色彩からモノクロームの世界に戻った」墨絵作品という3部構成で、作風の変遷が分かりやすく紹介されていまして。
私のようなものがココで感想を述べるのもおこがましいですが、筆の立つ「描き手」として名の通った田淵氏の長年の足跡を集めた展覧会は、「集大成」と呼ぶに相応しい堂々としたもので、「真剣に積み重ねた年月の重み」の偉大さを改めて思い知らされ、背筋が伸びる思いで鑑賞させていただきました。
そして、高島屋の「智積院襖絵」は、回顧展で振り返った内容が全て凝縮されたように、線猫の切れと、色彩をモノクロームに置き換えた全体感、そして、前作に当たる「永平寺」、「鎌倉八幡宮」の襖絵で培った墨絵の技術が遺憾なく発揮され、より一層の迫力と重厚感が漂う、見ごたえある展覧会になっていました。
遥か及ばずながら私も墨絵を描いたことがあるので絵を見てすぐに判ったのですが、最後に展示してあった「墨絵に用いた和紙の見本」と見ると、やはり、非常に描くのが難しい厚手で染み止めの効いていない「生紙」に描いているようで、なぜそんな難しい紙を選ぶのか?と疑問に思ったのですが。。。
私は様々な種類の紙を試し、このような和紙は吸水性が高いため、線は滲んでしまうし、墨の染み跡が残りやすく、ひじょうに「アン・コントローラブル」で扱いづらい材料なので、私は「シャープな描写には向かない」と判断し、薄手である程度染み止めの効いた和紙を使うようにしたのですが、そこを「敢えて」逆手に取り、不自由さを作品の「柔らかさ」に転換しているのではないか?と。
そんな目で作品を観察していただくと良く分かると思いますが、描線自体は以前の「カチッとした」ものではなく、近づいてみるとぼやっとした線と点描の集積体のように見えるのですが、離れてみると、不思議なことに、しっかりピントが合っているのは、墨絵以前の仕事で身に付けた確かな描写力があってこそのもので、、、。
また、一般的に墨絵の仕事は「書に近い」とも言われていまして、スピード感のある線で一気に描き上げるようなスタイルの作品が多いのですが、そういった手法を一切用いず、描きにくい用紙に少しずつ墨を染みこませていく事で、印画紙に写真画像が浮かび上がってくるような描き方をしているところは、やはり”絵具を置くように”塗っていく「日本画の感性」で、いわゆる「墨絵」とは一線を画するものなのではないか?と。
そんな事を思いつつ、会場を出ると、お昼過ぎに三越に着いた記憶でしたが、もうすっかり日が落ちて外は薄暗くなっていました。
■画業40周年 東京藝術大学退官記念「田淵俊夫展」
会期/2008年12月27日(土)~1月18日(日)
会場/日本橋三越本店 新館7階ギャラリー
■智積院講堂襖絵完成記念「田淵俊夫展」
会期/2008年1月14日(水)~1月27日(火)
会場/日本橋高島屋 8階ホール
時間/午前10時~午後7時30分(8時閉会)
※最終日は午後5時30分まで(6時閉会)
http://www.takashimaya.co.jp/tokyo/event2/index.html
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