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2009年1月

【展覧会レポート】 田淵俊夫展

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「日本橋三越本店」と「高島屋日本橋店」の両百貨店にまたがって開催された「田淵俊夫展」のレポートです。

日記の日付は執筆日ですが、先に閉会された三越展の最終日に駆け込み、ギリギリで両展を梯子することが出来ました。

二つの展覧会は、大学の退官にあわせフランスで開催した「画業40周年記念展」の巡回という位置づけで、これまでの画業を紹介する三越展と、、、5年の歳月をかけ完成させたばかりの、京都「智積院」講堂襖絵が一同に展示された高島屋展という構成になっていました。

先ず最初の三越展は、「線描きに目覚めた」初期作品、「線描きに色彩を加えていった」中期作品、そして「色彩からモノクロームの世界に戻った」墨絵作品という3部構成で、作風の変遷が分かりやすく紹介されていまして。

私のようなものがココで感想を述べるのもおこがましいですが、筆の立つ「描き手」として名の通った田淵氏の長年の足跡を集めた展覧会は、「集大成」と呼ぶに相応しい堂々としたもので、「真剣に積み重ねた年月の重み」の偉大さを改めて思い知らされ、背筋が伸びる思いで鑑賞させていただきました。

そして、高島屋の「智積院襖絵」は、回顧展で振り返った内容が全て凝縮されたように、線猫の切れと、色彩をモノクロームに置き換えた全体感、そして、前作に当たる「永平寺」、「鎌倉八幡宮」の襖絵で培った墨絵の技術が遺憾なく発揮され、より一層の迫力と重厚感が漂う、見ごたえある展覧会になっていました。

遥か及ばずながら私も墨絵を描いたことがあるので絵を見てすぐに判ったのですが、最後に展示してあった「墨絵に用いた和紙の見本」と見ると、やはり、非常に描くのが難しい厚手で染み止めの効いていない「生紙」に描いているようで、なぜそんな難しい紙を選ぶのか?と疑問に思ったのですが。。。

私は様々な種類の紙を試し、このような和紙は吸水性が高いため、線は滲んでしまうし、墨の染み跡が残りやすく、ひじょうに「アン・コントローラブル」で扱いづらい材料なので、私は「シャープな描写には向かない」と判断し、薄手である程度染み止めの効いた和紙を使うようにしたのですが、そこを「敢えて」逆手に取り、不自由さを作品の「柔らかさ」に転換しているのではないか?と。

そんな目で作品を観察していただくと良く分かると思いますが、描線自体は以前の「カチッとした」ものではなく、近づいてみるとぼやっとした線と点描の集積体のように見えるのですが、離れてみると、不思議なことに、しっかりピントが合っているのは、墨絵以前の仕事で身に付けた確かな描写力があってこそのもので、、、。

また、一般的に墨絵の仕事は「書に近い」とも言われていまして、スピード感のある線で一気に描き上げるようなスタイルの作品が多いのですが、そういった手法を一切用いず、描きにくい用紙に少しずつ墨を染みこませていく事で、印画紙に写真画像が浮かび上がってくるような描き方をしているところは、やはり”絵具を置くように”塗っていく「日本画の感性」で、いわゆる「墨絵」とは一線を画するものなのではないか?と。

そんな事を思いつつ、会場を出ると、お昼過ぎに三越に着いた記憶でしたが、もうすっかり日が落ちて外は薄暗くなっていました。

■画業40周年 東京藝術大学退官記念「田淵俊夫展」
会期/2008年12月27日(土)~1月18日(日)
会場/日本橋三越本店 新館7階ギャラリー

■智積院講堂襖絵完成記念「田淵俊夫展」
会期/2008年1月14日(水)~1月27日(火)
会場/日本橋高島屋 8階ホール
時間/午前10時~午後7時30分(8時閉会)
※最終日は午後5時30分まで(6時閉会)
http://www.takashimaya.co.jp/tokyo/event2/index.html

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鈴木氏が教室に

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先月の教室展でお隣さんになりました鈴木俊秀さんが、仲良くなった生徒のN君の誘いで教室に遊びに来てくださいました。

「僕も何か描いていたほうが教室に馴染みますかね?」と、周りに気遣って下さる鈴木さんに、「では、何か・・・」と思っていたところ、、、今週から新入門されたWさんのデッサン課題用に用意しておくはずだったスケッチブックを買い忘れたことを思い出しまして。

そういう時のために用意している(?)、一日で終わる「緊急課題」を、せっかくなんで、二人一緒にやってもらうことになりました。

その課題とは、こちらのページに紹介してありますアメリカでの墨絵ワークショップのときに考えたもので、「墨の濃淡を使って樹木のある風景画を描く」というものです。

先ずは、新入生のWさん曰く「小学校のとき以来です」という墨摺りから。

二人が熱心に墨を磨り始めると、様子を見守っていたN君が・・・「あっ、なんか、いい匂いがしてきた~!」と。

そう、墨って、いい匂いなんですよね~♪

墨磨りが終わると、次はグラデーションの練習。

墨絵用の和紙を用意し、全体を水でぬらします。

和紙は、他の画用紙などと違い吸水性があるので、そのまま墨を入れると筆跡がそのまま染み残ってしまうので、滑らかなグラデーションを作るためにはあらかじめ紙を塗らしておく必要があります。

全体が適度に湿ったら、和紙の端のほうから段階的に墨を入れて行きます。

Wさんにやり方を示し、ふと隣に目をやると、水彩作品の繊細さから慎重な方とお見受けしていた鈴木さんが、思いっきりどす黒い墨を画面にババっと氾濫させていて、びっくり!意外と思い切りがいい方のようです(笑)

「いやあ~、とんでもない事になっちゃいました」と焦る鈴木さんにちょっとだけ手を貸し、浮いた墨をタオルで吸い取ると、その後は次第に筆先の感覚が分かってきたようで、きれいなグラデーションが完成。

で、そのときのWさんはと言うと、一番細い線描き用の面相筆でグラデーションを作っていまして、、、この二人、案外、曲者かも?(笑)

その次は、新しい用紙に切り替え、いよいよ本番の樹木です。

先ほど説明した墨絵和紙の「染まりこみ」を逆利用し、あらかじめシルエット状の樹木を白紙に描き込んでおき、後から背景ごとグラデーションを掛けて絵を作ります。

そんな訳で、次の工程は樹木の描画です。

この課題ではいつも、「シルエット状になってさえ居れば、どんな木でもOK」と言う事にしていまして、、、ちょっと意地悪ですが、モチーフが無い分生徒さんの「生の個性」が出るので、とても楽しみな工程でもあるのですが。。。

新入生のWさんは、少し右側に芯をずらし、直立する素直な樹木を描き始め、鈴木さんは、筆の勢いを利用しやや即興的に味のある木を描きを始めました。

簡単に描いてしまえば10分足らずで終えることも出来る工程ですが、お二人とも独特の拘りがあるようで、じっくり時間を掛けて樹木の描画が完了。

時間を掛けただけあって、両者の個性際立つ素敵な木が2本仕上がりました。

そこで、最後の背景付け工程。

描きあげた樹木に、グラデーションの背景を付けていきます。

今度は、練習のときの単純作業とは違い、絵作りなので、グラデーションのパターンはそれぞれにお任せすることにし、静観。

Wさんは天地双方からグラデーションを掛け、地平線から光が射してくるような流れで、鈴木さんは地面方向から空が明るくなるように、グラデーションを掛け始めました。

最初は恐る恐る様子を見ながらの作業でしたが、少しずつ雰囲気が出て来るとイメージが膨らみ始めたようで、絵のほうも次第に「グラデーション」から「空」へ変わっていきます。

写真を撮らせて貰えばよかったのですが忘れてしまい、ココでお見せできないのが残念ですが、双方とも、柔らかで落ち着いた中にも、独特の個性が際立つ作品が完成しました。(掲載した写真は、私が見本に描いたグラデーションです)

そこで既に時間が過ぎていましたが、大急ぎで裏打ち作業。

他の生徒さん達も、二人の仕事の完成を見届けるまで残ってくださり、裏打ちも完了。

一日で完結していい記念になるのがこの課題の良いところです♪

(他の生徒さんも、ご興味あれば、いつでもやって見てください)

「凄く楽しませてもらいました」と、嬉しそうに教室を後にした鈴木さんの姿に、改めて、教室展から始まった交流に、私も嬉しい気持ちで一杯になりました。

また、遊びに来てください♪

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フィリピンからの便り

2009

あけまして、おめでとうございます

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

絵画教室の授業がいよいよ本日から始まりました。

12月の展覧会を終えて年越しになったため、皆さん揃って新作でのスタートとなり、教室にもあたらな風が吹き始めたように感じております。

そんな休みの間に、一通のメールが教室に届きました。

「ご無沙汰しています。マニラの作品 です」と題したメールは、フィリピンに赴任され、昨夏から教室を休会中の「菊地智徳」氏からの、現地で描いた作品を添えたお便りでした。

氏は、停戦監視団のお仕事で、紛争地域であるフィリピン・ミンダナオ島の復興支援活動にエンジニアとして参加されているそうで、、、常に命の危険と向き合う日々のなか、つかの間の平和が訪れるホテルの部屋で絵を描かれているのだとか。

基本的に私は、生徒さんのプライベートに立ち入らない主義なので、氏がどのようなお仕事をされているのか?あまり聞いたことがありませんでしたが、インパクトのある方なので、只者ではないと思っていたのですが、、、。

そんな菊地氏が初めて教室に訪れた日のことは、今でも鮮明に覚えています。

見学者の方には一通り同じ説明をしますが、、、その日も、いつものマニュアル通りに話しを始めると、菊地氏はいきなり、「あ~あ~、はいはい」と生返事をし、手に持ったカバンからスケッチブックを取り出しました。

そこには、山水画調の風景画が描かれていまして、「こんな絵を描いているんですが、何かアドバイスをください」と。

私は、その一言で、「この人にマニュアルは通じない!」と悟り、通常のデッサン課題を撤回し、「では、山水画から始めましょう」と言う事になったのですが、更にもう一押し「日本画絵具ってのは、どうやって使うんですか?」と。

こうなったらもう、やけくそ(心の声)で、「じゃあ、岩絵具で描きますか!?」と、なんでもあり(笑)

そこでさっそく絵具の説明をし、次週からいきなり”本題”へ。

とはいえ、私などは”表現”を重んじる「現代日本画」から入った口なので、いわゆる「山水画の手ほどき」など受けた事もなく、実際のところ、そのような絵画にもあまり興味がなかったのですが。

あまりにも真っ直ぐに、古式ゆかしき表現にチャレンジする菊地氏の作品が、却って斬新に見えてきまして、、、「こういうのもアリだな!」と、私のほうが感化されそうな勢いで。

とは言え、「”岩絵具を使った”山水画」なので、細部の表現や暈し塗りには私の伝授した日本画の技法が盛り込まれ、次第に「菊地式・山水日本画」と呼べるような、オリジナリティー溢れる作風が育って行ったように思います。

そんな風にして、私も菊地作品に楽しく関わらせていただいていたのですが、先述のとおりの休会で寂しく思っていたところへ、年末の便りが届いた訳です。

ご本人の許可も得られましたので、作品アルバムに掲載させていただく事にしますが、、、フィリピンで描いた作品には土地の風土や空気が反映されたのか?私が教室で見せていただいたものとはまた趣が異なる鮮烈な色彩を用いたもので、、、このような「日本画」が遠くフィリピンの地で描かれたのだと思うと、感慨深いものがありました。

停戦監視のお仕事は、常に危険と緊張の毎日だと思いますが、どうぞ、無事に帰国し教室に戻られる事を、お祈りいたしております。

以下、菊地氏の活動の様子を取上げた記事をご紹介しておきます。

「imt.pdf」をダウンロード

「jica1.pdf」をダウンロード

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